児玉:市川様、本日はお時間を頂きましてありがとうございます。どうぞよろしくお
願いします。
市川:いやいや、まぁ、どうぞおかけ下さい。
このインタビューは何を話せばいいんだろうねぇ・・・。主旨とかあるの?
児玉:そうですね。私としてはこのインタビュー記事を読んで下さった人達が(年齢
層はかなり幅広いと思いますが・・)こんなこともあるんだなとか自分もやっ
てみようかなと何かを始める、あるいは感じ直すきっかけになってくれればい
いな?と思っています。
ご自分が今までに公私問わず熱く没頭した経験があればそういったことの中か
らひとつでもお話しいただければうれしいです。
市川:そうなんですかぁ。それでは、僕の経験の中で自分でも自分のこれまでを振り
返った時に「これは結構すごいな!」と思っていることをお話します。
それは、実は僕の作ったシステムがかれこれ25年以上たった今も動いて、
ユーザーのお役に立っていることです。
児玉:えーっ!データベースの話では「それはありえる」と思いましたが「システム
が25年以上も使われ続けているなんて???ありえないんですけど(☆.☆)」
どういう内容なのかとっても興味がありますね。ぜひ教えて下さい。
市川:「とある東京の下町商店街システム」なんでだけどね。
100店舗くらいあるのかなぁ〜。そこの商店街クレジットシステムなんです
児玉:どのようなきっかけで始まったんですか?
市川:1980年ごろだったかな。もともと僕は、学生時代にラグビーをやっていて
ラグビー熱は、学生時代に燃え尽きてしまったんですよ。それで社会人になっ
てエンジニア、PM、とやってきて営業になったころ、入社して10年くらい
たった頃だったかな。何か新しいことをやってみたい、儲かることをやりたい
といつも時間があれば考えていたんだよ。
その頃、会社はクレジット関連の機器販売とシステム販売に力を入れていて、
営業に成り立ての僕はあまり顧客がなかったので、クレジットに関連するとこ
ろへの新規営業をして営業勉強をしていたんだよ。
それで、営業に行った先がシステムをつくることになった商店街だったんだよ
その頃はまだ、コンピューターと言うと汎用機の時代だからね。
誰でも1台はパソコンを持っているような今の時代とは大違いでね(^^)
お店の売上げは、おばちゃんが売上台帳に手書きしていて、請求書を郵送しよ
うとすると、請求書、送り状、宛名 まですべて手作業なんだよね。
クレジットカードを使われたら、また、別売上記載しないといけないし、クレ
ジット手数料を電卓で計算して、別の人が数字を確認して・・・と見ていて本
当に大変そうな作業だったんだよね。
なんかいつ行っても忙しそうに仕事をしているのにちっとも生産性が良さそう
ではないんだよね。それで、自分も元は技術者なんだし、この仕事をしている
人達を少しでも楽にしてあげたいな・・・なんて思ったことがきっかけだった
んだよね。
児玉:アーそうなんですね。それが商店街システムが今日まで存在することになる始
まりなんですね。
市川:それからかな。僕は商店街の仕組み、ましてや経理の知識なんか全く興味がな
かったから、初めは全く何もわからなかったよ。業務知識ゼロだったね。
だけど、いざ作ることになってからは、とにかく足しげく商店街に通ったね。
商店街組合の人たちに話をきいたり、働いているおばちゃんたちに話を聞いた
りして。かっこよく言うと調査・分析だよね。
これはかなりの聞き込みをしましたよ。
おかげで事務のおばちゃんと仲良くなってね。「大変なのよぉ〜」と愚痴交じ
りに業務の流れを話してもらっているうちにようやくお店がどんなことをして
いるのか、みんなの仕事の内容が理解できるようになったよね。
児玉:それだけ熱心になれたってことは、元々商店街の仕組みや、販売システムみた
いなものをつくることに興味があったということなんじゃないですかねぇ〜。
市川:興味なんかは全くなかったね。でもね、「どうせ作るならとにかく良いもの
を作りたい」その思いは人一倍強くあったけどね。
だから、汎用機時代に、お店側にパソコンを使うという前代未聞な発想を実現
して、お店側は入力と入力した数字の確認だけ。これなら、パソコン知識ゼロ
のおばちゃんたちでもちょっと訓練すればできたからね。
データは、音響カプラ → 汎用機に飛ばして一元管理。
おばちゃんたちの手書き伝票、請求書等の発送等々、今までの手作業がすべて
システム化できました。しかもパソコンを使うことで、経費をおさえ月10万
〜15万くらいで継続使用できるようにしたんだよね。この使用経費なら、お
ばちゃん社員一人分のお給料と思えば、安いものだってことも理解してもらい
ました。システムに退職や、終了は無いからね(^^)V
もちろん、当初のまま20数年も稼動しているということではないですよ。
時代にともなって改善・改良されている点もあります。それでも、業務の流れ
は大幅に変わっていないこと、そして何よりこのシステムがその業務の流れを
理解して作られていることが継続使用されている秘訣だと思っています。
「かゆいところに手が届く=本当に使いたい人に使ってもらえる=必要とされ
続ける=永年に渡り使用継続してもらえる」という現実を生むんだね!!
児玉:なるほど−。しかし、そんなロングセラーがあるんですね。システムは陳腐化
するのが当たり前という勝手な固定観念を持っていました。
パソコンだって季節商品であっという間にバージョンアップして登場します。
春モデル、夏モデルと言って・・・
開発も、常に新しい開発言語を使わないとシステムがつくれないのでは?と、
技術者泣かせだなぁとずっと思っていました。でも目線を換えてみると、確か
にそろばんが電卓に変わり、レジスターが高機能を備え、POSまで搭載し、
一連の販売状況が容易にデータとして取込まれ、ものすごい速度で検証、分析
されています。
しかし、切り口を換えて考えてみると流通の時間の短縮は進みましたが、業務
の流れ自体ははあまり変化をしていないですね。
発注 → 納品 → 検収 → 請求書 → 入金 → 入金確認 等々
市川:そうなんですよ。どの時代も「とにかく良い物をつくりたい」という思いが
大切なんですよ。作っている当時はロングセラーにしたい!なんて事は考えも
しなかったよ。ただ、目の前にあるお客さんの問題を解決できたらなぁ〜。と
そればかりを考えて、一緒になってお客様の目線で日常を把握することがやっ
とだったしね。結果的に、熱い思いが形になったことが今も使ってもらってい
るものとなったんだけどね。振り返ってみると、確かにものすごく自分の時間
も費やしたと思うよ。でもね、それは自発的な行動だから、楽しかったよね。
時代が変わっても物作りに携わっている人達には、この「熱意」はぜひ持ち続
けもらいたいなぁ。この思いが熱ければきっと今の時代でも30年先に動き続
けるシステムを作ることはできると思うよ。
児玉:「本気でいい物をつくりたい!という思いが、本気で作って応えたい!!」に
なってロングセラーとなったんですねぇ。
お話を聞いていて今の時代だからこそ市川さんのおっしゃっている「とにかく
良い物をつくりたいという思い」はものすごく大切なことだと実感しますね。
この「熱意」を持ち合わせた人々が同じものを作るという目的を共有すれば相
乗効果となり、本当に良い結果となりますよね!
市川:今は、情報過多で情報の選別が必要な時代だから、選択に迷うこともたくさん
あると思うけど、そんなときは、「良い物をつくりたい」という原点に戻っ
て始めてもらいたいし、やり遂げてほしいなと思っいますね。
この熱意は、お客様をも巻き込んで一緒になって進んでいく道を作ってくれる
と思っています。本当に僕はそうした10数年を過ごし、現場でこれを体感し
ました。
児玉:お話を聞いていて、元気が湧いてきました。
物作りに携わる人たちには、やはり自分の魂をその物に吹き込んでもらいたい
ですね。そして何より「とにかく良い物をつくりたいという思い」を持ち続
けて、自分が役に立っているということを実感してほしいなと思います。
本日は、お時間を頂きましてありがとうございました。
インタビューア:営業 児玉美佳子
2008年1月11日取材
